最近の百合まんが(青天の碧眼など)
百合まんがというくくり自体に思うところはあるもののとりあえず便利なのでこのまま行きます。日付をチェックしていて驚いたのですが百合アンソロジーつぼみが休刊したのは2012年12月で、もう1年近くが経とうとしているのですね、全然最近じゃなかった……。ともかくこの休刊の際には一花ハナ、はみ、小川麻衣子、須河篤志、あらた伊里、百合原明といった新進気鋭の作家陣の連載が中断を余儀なくされ、つぼみWebコミック(サイト消滅済み)等で次の単行本を出せるだけのページを使って一応の完結を見ました(「魚の見る夢」は例外で単行本書き下ろしでそのうち出るという話だった、はず)。
新進気鋭とは取ってつけたような褒め言葉ですが、実際にどの連載も文句なしに面白かったし、これからさらに面白くなるであろうというところでの衝撃的な事件でした。当時の競合誌、例えば百合姫などに比べて誌面の平均的なクオリティはかなり上だったと思うのですがまあ単純には行きませんね。これらが駆け足で完結させられなければならなかったことは百合まんが界に限定せずとも大きな損失だと思いますし、今でも残念です。あとで見るように完結までが単行本の形で残るだけ幸せだったのかもしれませんが。
ちなみに新進気鋭の基準は適当です。上で挙げた作家陣の中でもずば抜けて才気走っていた小川麻衣子は漫画賞を2005年に取っているほか2009年9月から2011年3月までゲッサンで「とある飛空士への追憶」の連載を持っており、魚の見る夢の連載初回はその直後に発売のつぼみ vol.11です。ただとある飛空士への追憶やゲッサンでの読み切りに百合色は見られず、東方同人でよく一緒に活動していたあらた伊里(つぼみ vol.13で「総合タワーリシチ」連載開始)とセットでつぼみに登場したイメージがなんとなくあるのでリストしておきました。この2人の単行本の巻末ではお互いへの謝辞を見ることができます。
他、はみ、須河篤志、百合原明の各氏は他誌での連載や同人活動で継続して名前を見ることができるのですが心配なのが一花ハナで、「神さまばかり恋をする」の2巻発売以降ブログにもTwitterにも投稿がありません。絵めっちゃ上手いのにこれからどこでも作品が見られないとすると本当にもったいない話です。別名で活動してるといった情報をお持ちの方は教えてください。
さて先ほども話題にした東方を中心とした百合同人のバックグラウンドを持つまんが家という流れを汲む当節最注目の作家が滝島朝香で、ようやく記事タイトルに挙げた「青天の碧眼」の話が始まります。当作の連載はまんがライフWINで2012年10月から2013年10月まで。終わってんじゃん!はい、単行本1巻の売り上げ不振が理由でepisode.11にて連載終了ということになったそうです。単行本1巻の収録はepisode.8までで、残りのepisode.9から11はepisode.1から5と合わせてまんがライフWINに掲載されています。つまりほとんどがWebで読めて恐らく単行本2巻はないです(11/23追記:ご本人のサイトにそのへんの話が載りました)。episode.9以降の公開が終わるかまんがライフWIN自体が消滅する前に今すぐ読んでくるとよいでしょう。
それもめんどいという人のため軽く内容を紹介すると、夢をなかばで断たれた半グレ女子中学生(夏樹)が、罪人として地球に落とされ人間の姿を借りて暮らす万能で飄々としているが常識の抜けた宇宙人(葵)の世話をいろいろ焼くという話で、葵の罪とは何なのか、夏樹は失った夢を何らかの形で取り戻すことができるのか、幼なじみの陽香との関係は、といった諸々が作品全体を引っ張るテーマです。絵は明らかに水準以上、葵に名前を付けるくだりなど細かなエピソードにも秀で、要するに超面白いのですが、もう続きはありません。
ストーリーは一区切りついたといえばついているのですが、他のまんがライフWIN掲載作品のように、ギャグ作品のため短期で魅力が伝わりやすいとかコミカライズのため知名度があるわけでもない作品をあっという間に終わらせるのはどうなんだろとちょっと思います。まあマンガ界はもともと修羅の国だろとか、応援するならもっと前に始めろよとか言われれば返す言葉もないのですが、早期で終わってしまったからといって優れた作品が少しでも多くの人に読まれる意義が減じるものでもないと思うのでこうしてご紹介したのでした。次作があるといいなあ。